【実は怖い】睡眠時無呼吸症候群(SAS)と交通事故の関係性

基礎知識

皆さんは睡眠時無呼吸症候群(以下SAS)と交通事故に関連性があることをご存知でしょうか?

普段は危険な運転をしないしっかりした方でも、SASのため交通事故を引き起こしてしまうケースがあります。そのため、SASと交通事故の関連性について、きちんと理解を深める必要があります。

今回はSASと交通事故の関係性について詳しく解説します。

SAS患者は事故発生率が高い

SAS患者と健常者の交通事故発生率を調査した結果、全運転者の交通事故発生率が6%の値であるのに対し、SAS患者は41%という数値になりました。つまり、SAS患者は一般のドライバーよりも約2.5倍も交通事故を起こす可能性があると考えられます。

またSASの症状レベルごとに交通事故発生率を調査すると、軽症のSASの交通事故発生率は13%中等症のSASは24%となりました。しかし重症のSASになると、交通事故発生率が46%であると判明しました。[注1]

よって、SASは一般のドライバーよりも交通事故を起こす可能性が高くなります。さらにSASの症状が重くなればなるほど、交通事故の危険性が高まることが分かります。

またアメリカでの報告によると、アメリカでは年間に4~5万人が交通事故で亡くなっています。その15~20%はSASが関連している事故であると推測されています。

様々な数値結果から、SAS患者の交通事故を起こすリスクの高さが理解できるでしょう。

SASによって交通事故が起こってしまう原因

SASは睡眠中に無呼吸や低呼吸の状態が断続的に繰り返される病気です。その結果十分に質のよい睡眠がとれず、日中の眠気や集中力の低下など日常生活への支障が発生します。

その結果、交通事故などの重大な事故を起こしやすくなるとされています。

実際に発生したSASによる交通事故

2003年:岡山での新幹線の停車位置オーバー

2003年、山陽新幹線が時速270kmで約30kmを運転し、停車位置をかなりオーバーした事故です。この事故によりケガ人は出ませんでした。

車掌が運転席に駆け込むと、運転士が眠ったままであったということです。運転手は身長が170cmで体重が100kgの肥満の体型であったということです。以前から周囲に睡眠中に何度も目が覚めると相談していました。検査の結果、SASであることが判明しました。

この事故は世間にSASという病気の存在を知らしめたといわれています。

2012年:藤岡市の関越道でツアーバスが防音壁に衝突

2012年、関越道藤岡ジャンクションにて乗客約40名を乗せたツアーバスが、防音壁に衝突する事故が発生しました。この事故により、乗客7名が死亡しました。この人数は当時、日本の高速道路で発生した事故の中で、最多の死亡者数となりました。

事故の後、運転手を診断した結果、SASであることが判明しました。

2014年:北陸自動車道で夜行バスが衝突事故

2014、富山の北陸自動車道にて、宮城交通夜行バスが衝突事故を起こしました。この事故により2人が死亡し、24人が重軽傷を負いました。この事故の際亡くなった運転手は、SASの簡易検査にて「要経過観察」という診断を受けていたということです。診断を受けていたにも関わらず、この方は運転していたことになります。運転させずに治療を行うべきであったと考えられます。

SAS治療のためにまずは検査を受けましょう

運転をする必要がある方で、SASに心当たりがある方はおられませんか?交通事故を発生させないためにも一度SASの検査を行いましょう。SASの具体的な症状は、

・いびきの音が大きい

・夜中に何度もトイレに行く

・起床時に倦怠感や頭痛がある

・日中に酷い眠気がある

といったものがあります。

SASの検査には病院に入院して行う終夜睡眠ポリグラフ検査がありますが、自宅で行える簡易検査もあります。自宅で行える検査は簡易PSG(ポリソムノグラフィーまたはスクリーニング)といい、検査機器を自宅に持ち帰って行います。仕事が忙しくて検査入院を行う暇がない方や、入院だと緊張するので、検査結果が正確か心配な方には、気軽に行える検査であるため安心です。

検査の結果SASと診断された場合は、大抵CPAPという治療が行われます。CPAPとはマスクを介し気道に空気を送り続けることで、無呼吸状態を防ぐ治療法です。CPAPを使用し無呼吸や低呼吸状態が改善されると、熟睡感を得ることができます。さらに、日中の眠気も軽減されます。

この治療ですっきりした目覚めや、日中の眠気が減少するといった方もおられます。まずは、しっかりとSAS治療を行い、安全に運転をできるよう目指していきましょう。

CPAPについてはこちらの記事で詳しく紹介しています。↓↓↓

まとめ

SASと交通事故の関連性について詳しく説明しました。そして実際に発生したSASが原因の交通事故についてもご紹介しました。

SASを患うと交通事故を起こす確率が高まるというデータも出ていますので、SASかもしれないと心当たりがある方は、できるだけ早めに医療機関で検査を受けましょう。

出典

[注1]L J Findley , M J Fabrizio, H Knight, B B Norcross, A J LaForte, P M Suratt,(1988),Driving Simulator Performance in Patients with Sleep Apnea

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